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☆☆☆ 時空を超え、日本文学の旅に出かけよう ☆☆☆

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蔵書紹介  徳島文理大学所蔵


 書  名 『其名(そのな)も高橋(たかはし)/毒婦(どくふ)の小伝(おでん)/東京奇聞』
 著  者 芳川俊雄閲、岡本勘造作、桜斎房種画 
 解  説  明治12年一月末に処刑された、高橋阿伝の一代記。 金銭の縺れから古道具商の後藤吉蔵を殺害し、斬罪に処された。 処刑後すぐさま「東京新聞」に新聞連載が開始され、5月6日に完結をみた。 同時進行で草双紙体裁にて単行本化される。刷りを重ねるヒット作となった。 本学には二本所蔵され、完本は後印本、五編までの端本は初版本と思われる。 初版本は珍しく、画像はその初編三冊である。【佐々木亨】

 書  名 頓阿本『古今和歌集』
 著  者 伝頓阿筆 
 解  説  奥書によれば、藤原定家による校定本(貞応二年本)を、鎌倉・南北朝 時代の、歌人で僧侶の頓阿(1289-1372)が書写した本とされる。 ただし、一般的に袋綴装(紙縒綴を除く)は、我が国では室町時代以降に広まった とされていることから、南北朝時代の書写(すなわち頓阿による書写)と見るのは 難しいと思われる(上冊に綴じ糸を補修した跡が見られるが、装丁を改めたよう には見えない)。本文中には、朱書の注記・校合等の書き入れがあるが、同様の 書き入れの見られる「頓阿本」が他にもあることから、別の「頓阿本」(頓阿筆本 とは限らない)に基づいて、本文とともに転写したものと考えられる。【青木毅】

 書  名 『大洋新話/魚説教』 
 著  者 仮名垣魯文作、猩々暁斎画 
 解  説  明治5年に発令された三条の教憲に取材した一作。 明治天皇を神格化し、天皇中心の国家体制を敷いて文明開化を推進するべく 発令された。講談界・演劇界、そして文学界もまた協力することとなる。 魯文は、海底の竜宮城を舞台として「海化」の世を描く。 魯文が実の世界へ転身する契機となった作とする説もあるが、世相を穿った 作としておく。刊行されたのは初編のみゆえ、刊行部数が少ないと考えられ ている。しかし本学所蔵本は見返しより後印本と判り、刷りを重ねていたことが 証せられよう。【佐々木亨】

 書  名 頓阿本『古今和歌集』  
 著  者  
 解  説  本書には、数箇所の落丁がある。前回述べたように上冊には綴じ糸を 補修した跡が見られるが、下冊の綴じ糸には補修の跡は認められない。ところが、 落丁は上・下両冊に存している。現装丁を見る限り、綴じ直したようには見えない上、 落丁はあっても錯簡は認められない。したがって、最初に装丁を施した段階ですでに 落丁があった可能性が高いと思われる。ただし、書写の底本にした「頓阿本」に すでに落丁があったのか、書写の過程で書き落としがあったのか、綴じる際に欠落 したのかについては、未詳である。【青木毅】

 書  名 『鳥追阿松海上新話』  
 著  者 久保田彦作著、仮名垣魯文閲、周延画 
 解  説  毒婦物の先鞭を付けた一作であり、明治草双紙の型式を 決定づけた作でもある。「かなよみ」新聞の連載に基づくが、これを中絶して 三分の一超が書き下ろしである。毒婦阿伝の毒牙にかかった男達の破滅と、 阿伝自身の転落の人生が描かれる。仮名垣魯文の関与も小さくはなかったものの、 本作に遡った連載の存在より、作者は久保田彦作としてよかろう。 古老の回想では九千部の売り上げを誇ったとされる。本学蔵本は、 刷りの具合と奥目録から推して、初・二編とも初版と思われる。 三編のみ後印本である。【佐々木亨】

 書  名 頓阿本『古今和歌集』  
 著  者  
 解  説  本書の伝来に関わると思われる事項を記す。奥書の末尾に 「此君亭蔵書印」と読める印記(朱長方印)がある。幕末に「此君亭」という版元 があった由であるが、関係の有無は未詳である。本書を収める函は二重になっているが、 内函は、本書がぴったり収まる大きさであることから、当初からのものと思われる。 外函は、蓋裏に「飯島春敬」(1906〜1996、書家・古筆研究家)の署名と「春敬」の 印記(朱方印)があることから、近代以降に製作されたものということになる。 その他、最終丁の裏面(裏表紙に糊付けされていたが糊離れ)に「柏忠」という印記 (黒長方印)がある。【青木毅】

 書  名 『鹿児島鎮静双六』  
 著  者 楊洲斎周延画 
 解  説  西南戦争に取材した双六である。士族の最大の反乱である同戦争は、諸新聞が 挙って戦況を続報した。しかし当時の新聞の弱点は、視覚的要素であった。そのため、 錦絵や草双紙がこれを補完する媒体として脚光を浴びた。双六もまたその仲間入りを している。征韓論で下野する西郷を振り出しに、激戦地を各コマに配し、西郷の首実検 から明治天皇による慰労までが描かれている。周辺から中心部へと進んで行く。一回休 は、官賊各軍が籠城した地に設定される。所蔵の一本は彩色の袋を伴う。【佐々木亨】

 書  名 『滑稽冨士詣』  
 著  者 仮名垣魯文、一孟斎芳虎画 
 解  説  万延元年(1860)は、女子に対しても冨士登山が許された。 それを当て込んだドタバタ劇である。場面場面のコントを軸に、 冨士登山から箱根湯治、そして開港間もない横浜へと足を延ばし、 江戸に帰着するまでを描いている。 挿絵の数が多く、しかも台詞が添えられて、登場人物の肉声が 届くが如しである。 本学所蔵本は十編揃いながらも後印であり、口絵に彩色を欠いて いる。初版は十編各上下巻の二十冊であり、上下巻を合綴一冊に した十冊本が後印である。画像は三編口絵で、当時の絵双紙屋 (大衆向けの本屋)の景を伝える。【佐々木亨】

 書  名 『西郷隆盛夢物譚』  
 著  者 羽田富三郎編輯・画 
 解  説  各号上中下二枚続きの三組揃の構成である。西郷が西南戦争出陣前に、 夢の中で天主に呼ばれ、その心情を吐露するというもの。私利私欲からの蜂起 ではないという、西郷擁護の立場から描かれている。画工羽田は笑門舎福来、 あるいは泉竜亭是正とも名乗り、同時期の戯作に筆を執っている。  本作は初号が九月、二号が十月の届と記載されるが、既に八月の届で山本 園衛編輯、聚星館版として本文活版で刊行された。十月には草双紙の体裁で 『西郷隆盛/夢物語』と改題され大阪の伏見豊吉から届がなされた。  西郷人気の凄まじさを物語る一作である。【佐々木亨】

 書  名 『復古夢物語』  
 著  者 松村春輔作、国輝画  
 解  説  各編二冊だが、三編のみ三冊の構成を持つ。幕末維新期の動乱期を描いた 戦記物の先鞭を付けた一作とされる。作者の松村春輔は長州藩士であったと伝え られる。ペリーの来航から鳥羽伏見の戦いまでを描く。彩色の袋入りで刊行された が、本学所蔵本には伴っていない。  画像は四編の口絵である。天誅組の乱を計画する中山忠光と、これに呼応せん とする旧福岡藩士平野国臣を掲げる。いずれの企ても利を得ず、悲惨な末路を辿る ことになる。【佐々木亨】

 書  名 『河童相伝/胡瓜遣』  
 著  者 仮名垣魯文作、暁斎画  
 解  説  福沢諭吉の『窮理図解』をパロディ化した一作。しかし各章冒頭のみが茶化 されているだけで、以降は『安愚楽鍋』と同様に開化期風俗を穿っている。明治 五年四月頃の話題に取材した記載も認められるので、脱稿はこれ以降であろう。  図版は口絵を紹介しておいた。善玉・悪玉が地上の人間を引き合っている。 山東京伝作『心学早染草』のキャラクターを維新期風俗に置き換えている。【佐々木亨】

 書  名 『芬明開花/窮理外伝』  
 著  者 平賀源内遺稿、仮名垣魯文披閲 
 解  説  見返しに平賀源内遺稿と銘打つが、明和七年刊『一子相伝/極秘巻』 (半田山人作・北尾重政画)の改題改修後印本である。明治五年からは八十五年も 前のことになる。仮名垣魯文が文明開化の世を茶化すべく各章段名に手を加え、 平賀源内の名を勝手に冠した一作である。源内の名は窮理学に無理なく結びつく からであろう。魯文の戦略は的中し、『国書総目録』でも源内作として掲載される。  図版は「吠(ほゆる)犬をなだむる妙術」の挿絵を掲げた。画面を眺めてその秘術を ご推測あれ。【佐々木亨】

 書  名 『安政午秋/頃痢流行記』  
 著  者 紀のおろか 
 解  説  安政五年七月末から江戸の町はコレラに襲われた。八月に大流行 したが、間もなく終息に向かった。『武江年表』は、路頭で這いずりながら 死に至る者もあったという。この事件をルポルタージュしたのが今回紹介 する一作である。  当時は時事雑説を作品化することは違法とされており、作者名も伏せられ、 版元もダミーの名称が記載される。序は紀のおろかと署名され、仮名垣魯文 の別称である。魯文が本文も手掛けたとしてよかろう。  挿絵はところせしとばかり棺桶が並ぶ火葬場を描いたもの。疫病に苦しめら れるのは今も昔も変わらない。【佐々木亨】

 書  名 『西洋料理通』  
 著  者 仮名垣魯文編輯、暁斎画 
 解  説  椀屋喜兵衛の書目録に拠れば、横浜在留の英人コックの手記にある、英国 の食料製方を紹介した、西洋割烹家必読の珍書という。英人コックとは、cook の洒落であろうか。本作は明治三年に、山東一郎著として刊行が予定されていた。 しかし最終的には魯文の編輯として刊行される。画像は口絵に掲載された、食器や 調理器具である。文明開化の食生活をあれこれと想像させる一作である。【佐々木亨】

 書  名 『世界都路』  
 著  者 仮名垣魯文著述、暁斎画 
 解  説  初等教育のテキストとして摺りを重ねた一作である。巻一・二が亜米利加洲、 亜細亜洲、巻三が欧羅巴洲、巻四が阿弗利加洲、巻五が北巻六が南亜米利加洲、 巻七が墺地利亜洲という構成になっている。当時のテキスト類は往来物と呼ばれ、 本文は暗唱用に七五調で綴られる。また習字の便も兼ねて、字体も工夫されている。 画像は、本文が北亜米利加州ニューヨークの紹介で、上段は独立の父ワシントン の功績を伝える。【佐々木亨】

 書  名 『魯文珍報』
 
 著  者 仮名垣熊太郎編輯 
 解  説  仮名垣魯文が「仮名読新聞」社内に雑誌部門を興し、愛息熊太郎を編集長に 据えて刊行したのが、今回紹介する「魯文珍報」である。三十三号まで刊行が確認 されている。内容は社説、随筆、小説、海外事情の紹介等多岐にわたる。当時は 新聞と雑誌の棲み分けが明確ではなく、新聞に掲載し切れない記事を掲載したと 思われる。  図版はその表紙である。当時の隠語で鯰は政府高官を、猫は芸者を指し、これを 馬と鹿で挟み、猿が上から覗き込む。何を謂わんとしたものか。想像してごらんな さい。【佐々木亨】

 書  名 「心学身之要慎」  
 著  者 一恵斎芳幾画、仮名垣魯文戯誌 
 解  説  一人の人間から飛び出した、目・口・耳・鼻が、各々自慢話に酔いしれ、 足が驕りを戒めると各々が反省するという筋立てである。タイトル通り「心学」 の教えである。色彩からして幕末の版と思われる。改印が見られないので、 パトロンが摺らせたものであろう。恐らく、各部位は魯文の仲間内の誰かを モデルにしており、楽屋落ち的要素が濃厚な一作と思われる。文字沢山の 構成と、仮名垣魯文の筆名提示より、『滑稽冨士詣』に接近した刊行と推定 した。【佐々木亨】

 書  名 『高橋阿伝夜刄譚』  
 著  者 仮名垣魯文作、守川周重画 
 解  説  資料紹介その一に掲げた『東京奇聞』と同一の殺人事件に取材した 作である。阿伝は公判中の供述を再三覆し、殺人の動機も一定しなかった。 従って本作と『東京奇聞』との毒婦阿伝は、同一人物を扱いながら生い立ち からしてまるで違う。二人の阿伝がいる如しである。  画像は初編上中下三冊の摺付表紙を並べたもの。匕首を手にする阿伝、 危機迫る後藤吉蔵、覗き見る阿伝の恋人小川市太郎が、各々役者似顔で 描かれている。かなりの早印本で、岩波書店刊行の新日本古典大系明治編 の底本としても一部利用されている。【佐々木亨】

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